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クレームからのストレスの回避法「接触抑制」

クレームからクレーム担当者が受けるストレスをどのように小さくできるか?

前回の「クレームからのストレスの回避法『Over-Conforming』」では、クレーム担当者が会社や店、もしくはお客様・顧客のどちらか一方に精神的に一体化してしまえば、ストレスが小さくなるという考え方を説明しました。

今回は「接触抑制」という考え方でクレームからのストレスを小さくする方法を説明します。

接触抑制


接触抑制とは、お客様・顧客との接触を避けることで、ストレスを小さくしていこうという考え方です。Shamirtという研究者はイスラエルのバス運転手を研究した結果、次のようなことを結論付けました。イスラエルのバス運転手は最も理想的な乗客を「パレスチナ人」だと答えたといいます。これはイスラエルとパレスチナの紛争が何十年にも渡って続いており、互いに憎しみあっているという一般的な見方とはまったく反対の答えだと思いませんか?

敵ともいえるパレスチナ人を「上客」だと答えたイスラエル人バス運転手に気持ちは何なのでしょうか?

理由は「パレスチナ人の乗客は料金を支払い、運転手を見ることなく、すぐに座席に座る」「バスを降りるときもさっさと降りていってしまう。」という接触の少なさでした。

パレスチナ人は自分たちの土地を侵略し、占拠し続ける敵イスラエル人と話もしたくなければ、イスラエル人である運転手などいないかのように振舞いたいのでしょう。イスラエル人がいるだけで不愉快になるのですから。

しかし、イスラエル人の運転手の側から言えば、「乗客との接触が必要ない」ということで、パレスチナ人はいい乗客なのです。

このことはどれだけスタッフにとってお客様・顧客との接触がストレスになっているかを表す結果だといえるでしょう。

クレーム担当者にとっても、できる限りクレーマー、もっと言えば、お客様との接触を減らせたら、どれだけストレスが少なくなることでしょう。

また、接触抑制の行動は「責任転嫁」という形でも現れてきます。「それは私の役割ではない」「私には権限がありません」ということで、お客様やクレーマーからの接触を断ち切ることができるからです。自分には権限がないことを理由に、上司や他のスタッフにお客・クレーマーとの接触の役割を転嫁してしまうという行動をとるのです。

このように、お客様やクレーマーとの接触を抑制することでストレスは小さくなっていくという考え方なのですが、クレーム対応のケースを考えると、クレームや苦情は否応なしに舞い込んでくるものです。接触したくないと思っても、勝手にやってきます。また、「私には権限がない」という責任転嫁も「クレーム担当者」として任命されている人にとっては無理でしょう。

クレーム担当者は「絶対に」接触をとらざるを得ないのです。

機械的対応


しかし、クレーム苦情に対して、「機械的な対応を取る」ことで接触を抑制するという方法があるのです。クレームや苦情をもたらすお客様を「生身の人間だと思う」から感情が発声するのであり、機械的に処理していけば、ストレスも生まれないだろうと考えて、マニュアルどおり、機械的に処理していくことで接触を抑制するのです。

Mizrahiという研究者は医者のストレス回避方法を研究して、その結果、医者は患者からのストレスを軽減させるために「機械的な対応」を取っていると結論付けました。

ストレス回避のために医者は、患者の名前を言わず、病名で呼んだり、患者には理解できない専門用語をわざと使い、視線を合わせないようにしたり、はたまた、患者から質問を受けたり、いらない会話をしないようにそっけなく対応するというのです。

機械的な対応を、冷淡にこなしていくという方法で、クレーマーとの接触の機会を少なくし、クレーム担当者のストレスを小さくしていくことができるといえます。

このような接触抑制の考え方はスタッフ側に立ったものです。反対にお客様の立場になって見ましょう。接触をしないように、目をあわさず、専門用語ばかり使い、対応は機械的。このようなクレーム担当者がいたとしたら、どんなに不愉快でしょうか。

確かにストレスは小さくなるかもしれませんが、顧客満足は得られません。できる限り、接触抑制の考え方を取り入れないほうが顧客満足にはつながるでしょう。しかし、クレーマーからのストレスを少しでも減らしたいというならば、クレーム処理の先々を読んで、クレーム対応における「リーダーシップ」をとってしまうという方法がいいでしょう。

実はこの「リーダーシップをとる」という方法も接触抑制の一つなのです。

クレーム処理のリーダーシップをとって、お客様の要求の先手先手を取るなら、お客様も不満は持たないでしょうし、余計な接触をしなくてすむ可能性が高いでしょう。

クレーマー対応・クレーム対策、苦情処理のプロになるためには「クレーム処理のリーダーシップ」をとることで、ストレスを軽減しましょう。