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スタッフへのエンパワメント(権限委譲)

あなたの会社、店でクレーマー対応・クレーム対応のシステムを構築していく際には、まず「クレーム担当者」を決めておきましょうと、「クレーム対応・クレーマー対策はリーダーの仕事」で説明しました。

会社・店を一人で運営されているなら、その方がクレーム担当者もしなければならないのは当たり前ですが、従業員が複数人いる場合にはクレームの担当者以外にも、すべてのスタッフが最低限、クレームや苦情に対応できる能力・ノウハウをつけることが必要です。
クレーム対応・クレーマー対策はリーダーの仕事」で説明した内容と反対の内容になってしまいますが、クレーム担当者とスタッフ一人ひとりができるクレーム対応とはまったく違うもので、この2つの機能がうまく組み合わさって顧客満足のクレーム対応・苦情処理ができるのです。

クレーム担当者は、クレームの最前線に立つ、責任者です。どのようなクレーマーにも、クレーム、苦情にも対応しなければいけませんし、最終的な責任をとることになります。

一方、すべてのスタッフが果たす役割は、常識的なクレーム苦情に迅速に対応し、商品やサービスに不満を持たれているお客様に満足してもらうことなのです。

よく考えて見ましょう。クレーム苦情といっても、日々、会社や店に持ち込まれるこれらの情報は多くが常識的に対応できるものばかりです。「商品が壊れていた」「賞味期限が過ぎていた」「サービスが悪かった」など、あなたの会社や店の商品サービスを改善する必要があることを示してくれる大切な情報なのです。

そして、これらのクレーム・苦情への対応・解決は、それほど難しいものではありません。しっかりと謝罪し、解決の提案をして受け入れてもらい、今後も会社や店の常連客になってもらうように、顧客満足を持ってもらうということです。

このような「普通のクレーム」に適切に対応するためには、「迅速に処理する」ことが重要になります。クレーム担当者に取り次ぎ、時間をかけて処理することは、お客様にとって望ましいことではありません。お客様としても、それほど気分を害していないならば、早く処理してもらいたいと思っているに違いないからです。

よほど、大きな金額の商品サービスを交換したり、返金したりするのでなければ、現場のスタッフが判断できるようにしておいたほうがいいのです。すべてのスタッフが一定のクレーム処理の判断ができるなら、できる限り現場スタッフにクレーム解決のための権限を委譲しておきましょう。

そうすれば、お客様の気分を害することなく、クレーム問題を解決し、お客様に満足していただけることでしょう。

ここで問題となるのが、どこまでが「常識的なクレーム」でどこからが「クレーム担当者が対応するべきクレーム」なのかを定義するかです。そして、現場のスタッフが対応するためのマニュアル化ができるかです。

これは最終的にクレーム担当者が策定していく必要があることでしょう。会社・店の種類などによって、寄せられるクレーム・苦情の質が異なりますから、一概に「こうしたらいい」というような一般的な判断基準はありません。そのため、クレーム担当者が経験を蓄積し、どのようなクレーム・苦情は現場スタッフが独自に判断してよいのかを定義し、その対応手順をマニュアル化していくことになります。

このように定義やマニュアルが整備されることで、現場のスタッフにクレーム処理の権限委譲がされ、より迅速なクレーム処理ができるようになります。

クレームの迅速な処理はお客様に会社や店に対する信用を高めることになります。単に、厳正に対応するばかりがクレーム対策・クレーマー対応ではないのです。