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クレーム担当者の役割とストレス(2)

クレーム担当者のメンタルヘルスを改善するためにはどのような方法があるか?その回答を得るために、クレーム担当者が置かれている立場をいろいろな視点からみています。

今回はクレーム担当者の役割として境界関係役割に続いて「下僕的役割」を見てみます。これは、サービス論の分野では古くからいわれてきた考え方です。サービス業の従業員には「下僕的役割」があるといわれてきました。下僕、つまり召使です。お客様に尽くす役割があるというものです。

ウェイターやウェイトレス、運転士さん、受付係、販売スタッフ、美容師・理容師など、多くのサービススタッフが尽くす系の仕事だと実感できるでしょう。

クレーム担当者は下僕的な役割はあるでしょうか?そもそもクレームを持ち込まれた時点で、クレーム担当者はお客様に対してそれほど強い立場にはありません。どちらかというと受身、防戦一方の立場に立ちます。そして、お客様が不利益を受けたことに対して、何かしらの賠償をすることになるでしょう。それが金銭でなくても、謝罪という形で賠償しなければいけません。そういう意味では、クレーム担当者も下僕的な役割を振られているといえるでしょう。サービス業のクレーム担当者でなくとも、クレーム担当者は下僕的な役割を負っています。


このような下僕的役割がある職種では以下のような特徴があるといわれます。

(1)お客様を指導したり、助言したりする立場にないと思っている。少なくともお客様に対する指導や助言は職業の使命ではないと思っている。

(2)自分の専門性や権威性を持っていない。

(3)自分の感情や欲求、思いが無視されてもしょうがないと考えている。

(4)お客様とのコミュニケーションはお客様側に主導権がある。

(5)お客様の間違いを指摘しにくい。

(6)お客様に対して、伝統的に弱い立場にある。

(7)下僕的なコスチュームをしている。

クレーム担当者は(1)のように、お客様に助言や指導をしにくい立場にありますし、(5)のように、お客様の間違いを指摘しにくいものです。また、(4)のお客様側に主導権があるという点も該当します。(3)の「自分の感情や欲求、思いが無視されてもしょうがない」と考える傾向もあります。お客様は理不尽な要求をすることもありますし、それに耐えなければクレーム担当者にはなれません。

(7)のコスチュームや(6)の伝統的な弱い立場はそれほど当てはまらないかもしれませんが、弱い立場という意味では該当するかもしれません。

ただし、(2)については自分の専門性や権威性を誇れるような職種にしていくことはできるかもしれません。社会的にクレームがこれだけ注目を集めているのですから、クレームの処理を行うための知識や能力を高める制度さえ整っていれば、専門性なども誇れるようになれるかもしれません。


クレーム担当者のメンタルヘルスを考えるときには社会的な制度も考えていく必要があるでしょう。