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クレーム担当者の役割とストレス(1)

以前、クレーマー対応、クレーム対策の担当者は、クレーム寄せるお客様と会社・店の間で板ばさみにあう「役割」にあると説明しました。このような役割にあること自体が担当者にストレッサーとなっているのです。

さらに、Thompsonという研究者によると組織を外部とつなげる役割を「境界関係役割」といいます。この役割は組織内の人々と組織外の人々をつなげていく人々で、内部と外部の両方から影響を受けます。クレーム担当者もこの境界関係役割にあるといえます。


Thompsonによると、サービス業などで境界関係役割を果たす従業員は次のような働きを期待されると説明しています。

(1)組織を代表して、お客様・顧客と交渉・取引するので、裁量がの余地が与えられる。

(2)サービス業ではお客様や顧客にニーズがあり、それらを情報として収集しなければならない。(製造業の原材料のようなもの)

(3)お客様や顧客から得た情報の中でも、会社や店にとって都合のいい情報を取捨選択する。(フィルターの役割)

このような働きはクレーム担当者にも常に要求されるものです。クレームを寄せるお客様をなだめ、解決に向かって交渉するのはクレーム担当者であり、その解決策の提案も決定もクレーム担当者に大きな裁量権が与えられています。

また、苦情を寄せてくれるお客様、クレーマーは重要なマーケティングの源泉です。彼らの意見を生かすも殺すもクレーム担当者の技量ですが、サービスを向上させる重要な鍵があるのは確かです。

ただし、会社やお店にとって都合の悪いもの、経営者や上司にとって決定的に不利なものは無視することも必要なときもあるのも事実です。

しかし、これらの働きは本当に精神的な負担が大きいのは想像できるでしょう。「裁量権が与えられている」という言葉は聞こえはいいですが、殊にクレーム対応においては、反対にストレスになります。「あなたが判断して、償ってちょうだい!」とお客様に言われると本当に困り果てるでしょう。マニュアルや基準があり、そのルール以外はだめです、と役人のように対応できたら、どんなに簡単でしょう。「裁量」というものはクレーム担当者にとってつらいものなのです。

また、クレームや苦情の中にサービス向上の種があるといっても、クレームや苦情の解決という作業で一杯一杯なのに、マーケティングの担当者のような配慮まではできないでしょう。

このような幅広い役割期待がクレーム担当者には要求されるのです。この期待こそがクレーム担当者にとってストレッサーであり、精神的に危機的な状況に追い込むことになっています。

もし、あなたがクレーム担当者として上司から「あれも、これも・・・」といろいろな役割を与えられたときには、「あぁ、これがThompsonの境界関係役割か・・」と自分の状況を客観化して見つめ直してみてください。

少しは、精神的に楽になるかもしれません。第三者の目で自分を見ると、少し余裕が出てくるからです。