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製造業のクレーム文化

近年、私たちの生活に密接なサービス業でのクレームに注目が集まっていますが、製造業でのクレーム対策、クレーマー対応も重要になっています。特に、日本の製造業も成熟化し、製品そのものの機能よりもアフターサービスなどを含めたサービス的な付加価値に差別化が行われるようになってきています。

成熟した社会に必要な製造業のあるべき姿は「よい製品を作ること!」なのではなく、「お客様に喜んでもらえる製品に常に近づけようと、お客様とともにいること、お客様のサポートをすること」なのです。

製造業のクレームで特徴的なことはクレームが製品の「品質」に関わることが中心ということです。

そのため製造業の場合、クレームを全社的に共有するということが難しいという問題点をはらんでいます。多くの製造業の会社では分業が進み、品質は品質管理の部署が担当していることでしょう。そのため、クレームといっても「品質管理の部署の人間が対応すればよい」という認識が全社的に広まっています。これは合理的な考え方です。せっかく分業しているのですから、「クレームは品質管理部門へ」というように考えれば、効率的な経営ができます。

しかし、本当にクレームは品質管理の問題なのでしょうか?

確かに製品の機能についてのクレームであれば、製品の品質が悪い、もしくは不良品が発生したことなのかも知れません。ですが、製品の不具合にしろ、不良品の発生にしろ、製品に対して責任を負っているのは企業であり、その構成員である社員なのです。

不祥事などが起きると、「会社が悪いのであって、社員は関係ない」というフレーズがよく聞かれます。これは本質的に見当違いな主張で、言い逃れ以外の何者でもありません。企業を運営しているのは社員らであり、社員こそが企業であるといってもいいでしょう。

お客様の立場に立って考えてみれば、お客様にとってメーカーとの接触は「製品」を通じてのみです。製品こそがそのメーカーの顔であり、その製品こそが社員一人ひとりなのです。

企業側からしてみれば、月産数万個というオーダーのうちの一つを買った「人」に過ぎないのかもしれません。製造業は通常、販売店や問屋などへ製品を出荷しているので、最終的なお客様とコミュニケーションはとりません。お客様と直接対峙していない分、「お客様」という認識が薄い、もしくはない傾向にあります。しかし、製品を通じてお客様に満足を提供していることで、収益を上げ、毎日生きていくことができるのです。お客様の顔が見えないからといって、製造業の社員は何か天からお給料が下げ渡されるわけではないことを認識するべきでしょう。

お客様一人ひとりに満足を提供するために製品を作っているのです。

このような考え方に立てば、お客様が下さったクレームは1件でさえ、他人事に考えることはできなくなります。ましてや「品質管理部門の問題だ」とはいえないはずです。クレームはあなたの問題なのです。

このようにクレームを全社的に捉え、社員一人ひとりが自分の問題として捉える「企業風土」を作り上げていくことで、クレームへの対応力がつくとともに、不良品や不具合の発生を減少させることができるのです。

安心安全の製品作りの第一歩はクレームの全社的な共有であり、社員一人ひとりが自らの問題として捉えることで、製品の品質向上が図られます。